「今までの100年とこれからの100年を紡ぐ衣服」を掲げるファッションブランド<TANAKA>が、”SIDE A”と題した25AWコレクションを発表。私たちが生きるこの争いの絶えない世界を”SIDE B”、パラレルワールドにあるミリタリーウェアが必要となくなった世界
を”SIDE A”とし、TANAKAとして唯一これからの100年に紡ぐべきではない衣服と向きあう。ショーのフィナーレでは、ピアノの旋律と共にそんな理想”SIDE A”が表現された。
今回のショーの中核として表現された「Art of TANAKA」。新旧の日本が誇る技術をもちいた、TANAKAの新しい試みである。岡山のデニム加工のテクニックである箔加工や、失われつつある桐生の横振(手振り)刺繍が、日本で織上げられたファンシーツイードやスコットランドの老舗のツイード、チェック素材に施された。デニムとも相性の良い和洋のツイード群がコレクションをリードし、日本の伝統工芸が華やかに会場全体を彩った。
ミリタリーナイロンツイルは、日本古来の裂き織りの技術を使ってツイード生地に織り込められ、白と黒に浄化、そして解体されたミリタリーウェアは布地に閉じ込められ、コレクションを象徴するルックに。ミリタリーウエアとの対峙の中では、「ミリタリーウエアは誰かを傷つける為の衣服ではなく、命を守る為の衣服」という”答え”を模索し、洋服そのものの起源、本質とも結びつけて表現された。また、2024年9月に広島を訪れた際に見た、「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」と刻まれた平和資料記念館のモニュメントからインスパイアされたラストルック。世界中から納められた何千羽もの千羽鶴や平和への願いを、ファッションとしてではなく、TANAKAのメッセージとして洋服に折り込み、日本、そして世界へと羽ばたかせた。
私達の生まれ育った土地では、雪の降った翌朝は白一色の銀世界になり、全てなだらかな線で覆われる。そこには何の境界線も隔たりもなく、私達は、世界は一つに繋がっているという事を感じる。