原宿駅から徒歩9分。竹下通りを抜け、かつて“裏原”が生まれた原宿の裏路地にある雑居ビルの3階に、年代に囚われず”曲がった”ファッションを提案する古着屋がある。アートやインテリア、グルメといった多方面からファッションを捉え、他にはない多くのカルチャーが融合した独自の空間を提供している。今回は、そんな古着屋「magari」のオーナーを務める大附氏にインタビュー。彼が紡ぎ出す、ファッションの枠を超えたライフスタイルの提案とその意味を、今の原宿に対する想いと重ね合わせながら掘り下げていく。
ーまず初めに、magariは”何”から生まれたのでしょうか?
コミュニケーションです。
(THE VAN)コミュニケーション。
magariではファッションを通じてコミュニケーションのきっかけになるような服の提案、つまり”酒のつまみになる服”をサブコンセプトに掲げています。また、生活をより豊かに彩る存在であるためにイベントの主催、アートやインテリア、フードに関する情報発信も行っています。
ー主なコンセプトでは「デザイナーズ」、「テック」、「裏原」の3つがキーワードとなっていますね。
この3つは、私が「Made(for)_humans」というブランドをディレクションしている時のデザインソースであり、ファッションを語るうえで欠かせないものです。
(THE VAN)そのキーワードに”今”向き合い、提案する理由は何ですか?
magariのセレクトは一極化しないよう、”架空の主人公が人生を通じて出会う服”をテーマに陳列しています。私は生物の中で唯一、人間だけが自ら選択し取捨できる存在だと思っています。CPUやボットのようにこだわりや楽しみを忘れて無感情で生きるのではなく、自分だけのこだわりを持つ「主人公」になってほしいという想いを込めてセレクトしています。
正直、今の時代は好きになれないですし、このままでは私が大切にしている世界が失われてしまうのではないかという危機感も抱いています。けれども、だからこそ”今やること”に意味があると考えますし、薄利多売や大手一強が主流の今だからこそ輝くものがあると信じています。
(THE VAN)主人公は面白い視点ですね。
magariがイメージするのはアート、ファッション、グルメ、造形物が好きな人たちです。もっと細かく言うのであれば、副業で音楽活動をしながらバーやアパレルの仕事に携わる東京の男性。やりたいことや欲しいものはたくさんあるけれど、時間やお金が少し足りず、旅行にはなかなか行けない。それでも、近場でおしゃれな仲間とオシャ飯を楽しみながら、タバコを一服するようなライフスタイルを楽しむ人をイメージしています。
ー年代に囚われず曲がったファッションを提案するmagariですが、”曲がった”ファッションに関して詳しくお聞かせください。
前提として、”カジュアルで人と同じようなファッション=まっすぐ”と私は定義しています。その上で、かっこいいやかわいいなどでは表現できないファッションを”曲がっている”と表現しております。曲がったものとして店頭には〇〇ブランドらしくないアイテムや、普通の柄ではないイレギュラー個体を並べています。また、裏原がメインストリートから一本曲がった道にあることにも由来しています。
ー先ほどのお話にもあったように、magariではアート作品の展示会や音楽イベントのプロデュースなど、ファッションを取り巻くカルチャーに対しても精力的ですね。ファッションに加えて、 そのようなカルチャーを交えた取り組みを行うのはなぜでしょうか?
私自身の長い下積み経験もあり、店舗を構えた際にはこれまでのたくさんの恩を次の世代に繋いでいきたいと思っていました。ですので、新しいクリエイションを作っている方で、行動力はあるけれど予算や自信が足りないという方々に対して”間貸し”という形で、新しい事や物に出会える場所を作っていきます。現在は店舗オープン直後で運営に手いっぱいの状況ですが、今後は「衣・食・音」をテーマにしたイベントをたくさん開催していきたいと考えています。
(THE VAN)中には、THE VANでも取り上げているファッションブランド「ryaw」との取り組みもありましたね。
ryawのデザイナーである片出とは幼稚園の頃からの幼馴染で、magariの初期を一緒に企画してくれた仲間でもあります。キャナルシティ様(博多のショッピングモール)からのご依頼で福岡店を始めてからは、ryawを取り扱いブランドとして展開していました。
こだわらなくても楽しめるけれど、こだわることで厚みが増す
ー店舗を構える原宿は若者が集いつつ、トレンドを絶えず生み出してきた場所ですが、大附さん
から見てどのような街ですか?
コロナ以降は、昔よりも商業的になったように感じます。学生の頃に歩きながら見ていた個人店が次々と姿を消し、駅の近くはほとんど大手の店舗で埋め尽くされ、どこかフォーマット化されてしまったのが残念です。それでも、裏路地に足を踏み入れるとお洒落な人々や店主のこだわりが詰まった素敵なお店が点在していて、やっぱり好きな街だなと思います。正直なところ飲み屋が少なくて、21時を過ぎるとゴーストタウンのようになってしまうのも残念です(笑)。仕事終わりにふらっと楽しめる場所がもう少し増えたらいいなと思っています。
(THE VAN)インスタグラムのハイライトにはグルメ紹介もありますが、どのような食べ物がお好きですか?
カタカナのおしゃれなご飯が好きです。無駄におしゃれで変なご飯があるとつい頼んでしまいます(笑)。
(THE VAN)食べ物も洋服も、”人”を作りますよね。 内側と外側、何を食べるか、何を着るかでその日の自分が彩られますし、そう思うと食べ物も”ファッション”のように感じてきます。
こだわらなくても楽しめるけれど、こだわることで人生に厚みが増す。ファッションもグルメも、どこか通じるものがあるように感じます。盛り付けや原産国、味付け、そして装飾。そろそろ洋服を食べてみようかな(笑)。
ー最後にmagariの展望や目標、そして読者へ向けたメッセージをお願いいたします。
今後は、「magari」としてのスタイルを確立することを目指します。イベントが開催できる店舗への展開や、インテリア、飲食店の運営など、幅広い分野を通じて「magari」のライフスタイルを提案していきたいと考えています。まだまだ全力を出し切れていないと感じているので、これまで以上に尽力してまいります。
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< FICCE over size wool coat >
magariでは異素材のコートやディテール系、ロング丈などたくさんのコートをご用意しております。中でもこのアイテムは、着るだけでオーラが出るような一着でオススメしたいアイテムの1つです。
< EURO VINTAGE over size mouton jacket >
レザーアイテムも、曲がったものをたくさんご用意しております。オーバーサイズのアイテムやカラーリングの良いアイテム、ディティールの面白いアイテムなどなど、年代問わず良いアイテムをたくさん揃えています。
< 96AW DIRK BIKKEMBERGS velcro boots >
このアイテムは、これまで多くの方にご試着いただいているのですが、未だにサイズの合う方に出会えていません。今やmagariのシンボルのような存在になってしまっています(笑)。サイズの記載はありませんが、41〜42程度かと思います!シンデレラのご来店を心よりお待ちしております!