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KIKO KOSTADINOV 25AW WOMENSWEARコレクションを発表 「女性にしかできない魔法」

  • ikuru15129
  • 3月19日
  • 読了時間: 3分
Deanna Fanning(ディアナ・ファニング)とLaura Fanning(ローラ・ファニング)の双子の姉妹が手掛けるKiko Kostadinov(キコ・コスタディノフ)ウィメンズラインが、25AWコレクションを発表。フランス料理店「Brasserie Mollard」で行われた本コレクションは、「夜と朝のあいだの、あなたは誰?」、「街をさまようあなたは、誰?」といった問いかけと共に幕を開けた。新しい街を知ること、新しい自分に出会うこと、官能的で奔放な精神に満ちたショーがパリの3月を彩った。

インスピレーションのひとつは、オーストラリア出身のダンサー、Vali Myers(ヴァリ・マイヤーズ)。服を脱ぎ捨て、夜通し踊り、シャンパンを飲みながら朝焼けの街を自由に駆け回った彼女の装いは、薄手の下着の上にコートを羽織るだけ。その“着ている”とも“脱いでいる”ともいえない曖昧な美しさと自由さが、今回のコレクション全体に漂っている。また、1956年に発表されたEd van der Elsken(エド・ヴァン・デル・エルスケン)の写真集『Love on the Left Bank』に写る女性たちも着想源であった。抑制と解放のはざまにいる彼女たちは皆、パリを精神的な拠りどころとし、ファッションとパフォーマンスを通して新たな自分をつくりあげていた。

そしてコレクションの軸となるのは、クラシックな女性の“アンダーウェア”の概念である。尖ったブラジャーや硬いクリノリンといった、胸や腰の曲線を強調する昔ながらのディテールは現代的にアレンジされ、ブラウスの柔らかなダーツやウエストまわりに張りを持たせたペプラムへと姿を変えている。

さらにそのアイディアは発展し、体のまわりに空間を生み出すような新しい形へと進化。たとえば、サーマル加工で丸みを帯びたショルダーや、硬さを加えたプリーツによって、ニットウェアに整った構造と存在感を与えている。ランジェリーのディテールはほかにも、抽象的なペイズリー模様のアップリケをあしらったスリップドレスや、身体に沿う薄手のニット、柔らかなダーツが入ったブラウスなど、肌に近いレイヤーとして随所に取り入れられている。

一方で、その女性らしさに“ボーイッシュ”なレイヤーを重ねるのもこのコレクションの特徴。 テディ・ガール(1950年代にロックやメンズ服を取り入れた若い女性たち)やトムボーイのような、古着を重ね着したような自由なスタイルからインスピレーションを受け、 スーツやシャツ、アウターの新しい表現を探っている。伝統的なメンズウェアの要素をベースにしながらも、ウエストにはドローストリング (ひも)を入れ、ネクタイは襟に巻きつけるように変化を加えた。さらに、日本の職人によるペイントを施したデニムのバットウィングジャケットやタイトなシガレットパンツによって、1950年代の特徴である輪郭のはっきりしたシルエットが現代的に再解釈された。

彼女の足元にはその日の気分が現れ、アクセサリーもまた、彼女の気分とともに変化する。羽のようなレザーで作られたウェッジパンプスや、ジップで形を変えられるカスタムペイズリープリントのサイハイブーツ、足袋のようなスプリットトゥのAsicsスニーカー......。ドクターバッグ、煌びやかなクリスタルのイヤリング、小悪魔のような尖った帽子、首元に宝石が埋め込まれたスカーフなど、どれも個性と感情を映し出している。このコレクションでローラ&ディアナが描くのは、女性たちが自分の身体をどう纏い、どう表現するか。セクシュアルで堂々とした存在でありながら、柔らかく、しなやかであること。相反するものの間に、自分だけの道を見出す。それが、女性にしかできない魔法だから。


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