日本人の創作家集団によって2017年にスタートしたファッションブランド「LES SIX(レシス)」が、25AWコレクションを発表。今季のテーマは “PANTOKRATOR”。
ショー形式で発表された本コレクションは、新宿区にある「王城ビル」にて行われた。1964年、東京オリンピック・パラリンピックの開催で日本中が沸き立つ中、歌舞伎町に竣工したこの建物は、名曲喫茶、キャバレー、カラオケ店と形を変えながら、約60年間にわたり新宿の大歓楽街を見守り続けてきた。
今回のショーではその地下空間が舞台となり、開始前に流れていた陽気な音楽とは一変、ショーが始まるとともにホワイトノイズが空間を支配し、蛍光灯が不規則に点滅。視覚と聴覚を揺さぶる演出が、観客に緊張感を煽り、コレクションの世界へと引き込んだ。
「信念を貫くことの美しさ」が際立つ今回のコレクション。多くの人々が理想を諦め、現実と折り合いをつける中で、「自分はどうなのか?」と問い続ける。目の前の存在を認識し、妥協せずに生きる。その決意こそが、このコレクションの核にある。現実的なものが現実を隠す。真実めいたものが真実を隠す。美しいものが醜いものを隠す。
ふと昔を思い出してみた。
あの頃は、音楽やファッションやアートがいつかこの世界を変えてくれると思っていたし、このつまらない毎日を別世界にしてくれると信じていた。
自分もその一員になりたくて世界の色んな人や国のカルチャーを吸い取れるだけ吸い取って、たくさん我慢もして、いつかの日か全力で吐き出してやろうと思っていたし、今もそう思っている。
あの頃仲間だと思っていたみんなは、いつの間にか言い訳ばかり上手くなっていって、現実からは目を逸らすようになっていくし、やらない理由を、いや、やれない理由を商品化ばかりしていくようになった。
そんな風に本当になりたかったのか。
自分もそんな風になってしまうんじゃないか。
そんな事を考えた時、ふと思った。
どうせなら、正直に言ってやろう、と。
どんな醜い世界に僕らが生きていて、どんなに自分たちが汚い事が美しいのかって。